ひきだし1 父

今から10年前に隣県に住んでいた私のところへ、父から電話があった。

「オレ脳梗塞で入院した」

どうやら自分で違和感を感じて救急車を呼んだらしい。

手術にはいたらなかったが、時間が経つごとに症状が悪くなり結局右半身麻痺となる。

このとき父は独り暮らし。

父は詐欺を信じ込み仕事もしていなかったので、子どもたちによって母と別れさせられ、引きこもり気味の下の弟と一緒に住んでいた家が火事にあい、弟は亡くなったので独りだった。

私もすぐ下の弟も母も、詐欺騒動のときに父を見放していたので、誰が面倒をみることもなく、束の間いい仲の人もいたようだが独りだった。

火事で更地にした自宅の土地が売れず、大工だったので家を建て、完成間近の現場で倒れる。

1番近くにいる家族ということで隣県にいたのに私が動くことになった。
娘というのは面倒なものだ。

入院、転院してのリハビリ、退院後の施設の選択、包括支援センターやケアマネジャーとのやり取りなど、いろいろ勉強しながら対応する。

詐欺で自己破産手続きをしていたが、火事で保険が入り借金整理のとどまっていたが、自宅建築費の支払いと金銭面の整理をする。

退院後の施設は、家族が直接見学に行き申込をし、ベット空きを待つ。
10件ほどの施設を県外に住み多忙な弟と分けて、1〜2日で回り隣県の住まいに戻るなど、遠隔地からの介護準備に手間取ったものだ。

数年後の別件ではケアマネジャーが施設探しをして申し込んでくれたので、いまは1人で右往左往しなくてもいいのかもしれない。

とにかく、高齢者が多くなっていくこれからの、遠隔介護や施設の在り方など、この国は問題が山積みなんだなと思っていたし、どうしたら改善するかも分からない。それでも自分が動いて今ならまだ受けられるサービスとかをめいいっぱいあてがっての現在。

父は脳梗塞で身体障害者手帳を持っている。施設退所のあとは新築の自宅に住むことを希望。家族が介護介助をしないので、やれることは本人でやってもらい、施設とサービスを利用した。もちろん金銭面も補助しないので生活保護。私は月に一度のケアマネジャーとの打ち合わせと、財布の管理をしている。成年後見人の制度も利用しようと思ったが、お金がかかることなので、私がその立場を遂行している。

父のことは直接家族が誰も手を出さない、おひとり様自宅生活の介護サービスの設定だ。

医療を受診するときは家族が連れて行くが、ときには救急車のお世話になり、父は排尿不能のためのフォーレ(管)をつけている。

食事ができ、薬も管理し、洗濯をし、尿廃棄を自分でしていたが、最近はウトウトしがち。普段から会話がないが発語が減り、忘れることが増えてきたようだがあえて受診せずにいる。

父の脳梗塞から10年経つ。

思えば家族に縁のない父の人生は、彼が小さい頃からずっと続いていた。

けれど見そめた母と結婚して子どもが3人いたのも事実。家族がいて幸せな時間もあったのだと思うが、それは父が想うことなので、誰にも分からない。

これが私と父の関係性だ。

2026.4.20